【名監督の控え選手への接し方を学ぶ】高校野球監督本徹底比較(1)~控え選手編~

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このコンテンツは下記の5冊をテーマごとに比較したものです。

興南・我喜屋監督「逆境を生き抜く力
日大三・小倉監督「お前ならできる―甲子園を制した名将による「やる気」を引き出す人間育成術
広陵・中井監督「ともに泣きともに笑う―広陵高校野球部の真髄
前橋育英・荒井監督「『当たり前』の積み重ねが、本物になる ~凡事徹底――前橋育英が甲子園を制した理由~
中京大中京・大藤前監督「中京魂―折れない心の育て方


名監督と呼ばれる監督は、例外なく控え選手を大切に扱います。
甲子園優勝経験のある監督が著書の中で控え選手をどう語っているか、比較してみましょう。

興南・我喜屋監督は、甲子園での優勝を「一瞬の輝き」といい、それよりも部活動を通して何を学んだか、学んだことを次のステージでどう活かせるかのほうが大事であるといいます。そんな我喜屋監督は、控え部員にこう話すそうです。

だから、レギュラーになれない子にはこう話す。
「レギュラーになれるかなれないかなんて、長い人生から見たらたいしたことじゃないぞ。将来うんと偉くなって、レギュラーだった連中をこき使ってやればいいじゃないか」
「だから、立派な社会人になるために好きな野球を通して、ここで修行をしていけばいいんだ」
野球部ではぐくんだ精神力を活かして、次のステージでホームランを打てればいいのだ。

(出典:「逆境を生き抜く力」)

日大三・小倉監督は大会前にメンバーから外した選手とは、時間の許す限り話し合うそうです。そして選手との間の「思っている」「思ってくれている」の関係を常に保ち、選手のやる気を奪わないよう努めているそうです。

その選手の努力を認め、にもかかわらず補欠に落とさざるを得なかった理由を率直に話すんです。また、選手に不満があるなら、納得のいくまで選手の話を聞いてあげる。
そうすることで、「自分のことをちゃんと思ってくれている」とわかってくれる。選手との間にしこりは残らず、選手は前にも増してチームのために努力するようになってくれるんです。

(出典:「お前ならできる―甲子園を制した名将による「やる気」を引き出す人間育成術 」)

広陵高校では、3年間一度も公式戦のベンチに入れないまま卒業してく選手のほうが多いそうです。広陵を率いる中井監督は、部員にこう言うそうです。

私は、いつも選手にこう言っている。
「ええか、もっともしんどいのは、控えの3年生が本気で3年間をやりとおすこと」
もちろん本人は試合に出たいだろう。そのために日々の鍛錬を積んでいるのだから。それを超越してチーム、あるいは他人のために本気になって支える。その気持ち、その精神が、いちばん尊いと思うのだ。

出典:「ともに泣きともに笑う―広陵高校野球部の真髄

前橋育英・荒井監督は2013年の選手権で優勝した際、2年生エースの高橋光成投手をベンチでサポートする役割を2人の3年生に依頼したそうです。この2人の先輩のサポートのお陰で最後まで踏ん張った高橋光成投手は、自分の打撃で勝負を決めた試合のインタビューでこういったそうです。
「3年生のために勝ちたかった。3年生と、少しでも長く野球がやりたいと思って打席に入りました」
荒井監督はこう言います。

誰だって試合に出たい。しかし誰もが出られるわけではない。
活躍して、陽の当たる選手もいれば、陽の当たらない場所で、いつ実るのかわからない地道な努力を続けなければならない選手もいる。
それがチームだ。
足の遅い選手を代走として送り出せないように、誰もが人のために尽くせるわけではない。試合に出られず、悔しい思い、苦しい思いをしている選手に対して、どれだけ「お前が必要だ」と伝えることができるか。その信頼関係を築くことができるか。

出典:「『当たり前』の積み重ねが、本物になる ~凡事徹底――前橋育英が甲子園を制した理由~

中京大中京・大藤前監督は、最後の夏にベンチ入りできなかった3年生が行う「引退試合」の日に、ベンチ入りメンバーに向かってこう言ったそうです。

引退試合は、ベンチ入りメンバーにとっても夏の戦いに向けて大きな意味合いがあります。その日、僕は彼らにこう語りかけるのです。
「お前らは、どれだけ苦しくても、どれだけ辛いことがあっても、グラウンドに立って甲子園に挑戦することができる。でも、今こうして甲子園につながらない試合でも一生懸命に野球をやっている彼らは、大会に入れば野球がやりたくてもスタンドで応援するしかない。だから、お前たちはみんなの思いを背負って夏の大会に挑んでほしい。仲間の想いも感じながら、甲子園にチャレンジしなければいけないんだ」

出典:「中京魂―折れない心の育て方

いずれの監督も、メンバー外の部員ときちんと向き合い、コミュニケーションを取ることでチーム全体のムードを保っているようです。そして、控え部員たちは現実と向き合い、自分の役割をきちんと果たしているのでしょう。

最後に、興南・我喜屋監督が「チームワーク」について語った部分を引用いたします。

チームワークとは、ただ仲良くすることではない。
チームワークとは、文字どおり「それぞれが与えられた役割をきちんとこなすこと」まずはそれが大原則だ。そして次に重要なのが、信頼関係を築くことだ。
信頼関係を築きたいなら、まずは何事にも真摯に取り組むことが必要だ。
全員が常に真剣に練習に取り組んでいれば、自然と相手を信頼できるし、自分も信頼してもらえるようになる。

(出典:「逆境を生き抜く力」)