【書評】前橋育英高校・荒井監督「『当たり前』の積み重ねが、本物になる 凡事徹底 前橋育英が甲子園を制した理由」

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2013年夏の甲子園を制した群馬県・前橋育英高校の荒井直樹監督の著書です。
本のタイトルに「前橋育英が甲子園を制した理由」とありますが、決して下馬評が高くなかった前橋育英が何故甲子園で優勝できたのか、それを知りたいと思い購入しました。

本を開くと、まずこの文章が目に飛び込んできます。

誰にでもできることを、
誰にもできないくらい、
徹底してやり続ける。

これがタイトルにもある「凡事徹底」です。
本書は、この「凡事徹底」をテーマに進んでいきます。

【目次】

第一章 チームづくりで徹する
第二章 選手の育成で徹する
第三章 指導者として徹する
第四章 日常生活で徹する
第五章 人として徹する

凡事徹底

タイトルにもある「凡事徹底」という言葉、荒井監督は帽子のツバに記しているそうです。
荒井監督が選手たちに言い続けているのは、決して派手ではない以下のようなことです。

ミスの後をそのままにするな。
キャッチボールは心を込めて、丁寧に。
たとえタイミングはアウトでも、常に全力疾走すること。
物はいつでも大切に。ネクストバッターズサークルで振ったバットのグリップも、そのまま地面に置くのは厳禁。
食べ物は残すな。

荒井監督は、「魔物がいる」と言われる甲子園でも普段通り、いつも通りの野球をするために、同じことを繰り返し言い続けているそうです。

勿論、この通りにやればどこでも甲子園に出られるというわけではありません。
ここで言う「普段通りの野球」は猛練習により一定のレベルに達しているものでしょう。

試合に出られない選手たちをどう光らせるか

私が本書で一番好きなエピソードは、第一章にある、控え選手に関して書かれたこの部分です。

夏の大会で15番をつけた板橋達弥と17番の若松徹也は3年生だ。
彼らにとっても、これが最後の大会ではあるが、試合に出場する機会はあるかわからない。そんな彼らに、私は1つの役割を課した。
「光成がベンチに帰ってきたら、冷やす係をやってくれないか。」

「光成」とは、2年生エースの高橋光成投手(現埼玉西武)のことです。
最後の夏の大会で、後輩をサポートする役割を与えられるということは、つまりベンチには入ってても、ほぼ出場機会がないということになります。
両選手とも、そしてそれを両選手に伝えなければならなかった荒井監督も相当辛かったことでしょう。

足の遅い選手を代走として送り出せないように、誰もが人のために尽くせるわけではない。試合に出られず、悔しい思い、苦しい思いをしている選手に対して、どれだけ「お前が必要だ」と伝えることができるか。その信頼関係を築くことができるか。

しかし板橋選手、若松選手ともこの辛い役割を最後までやり遂げました。両選手の献身的なサポートが高橋光成投手の好投を引き出したといっても良いでしょう。前橋育英優勝の立役者は、荒井監督の思いに応えたこの2人といっても良いかもしれません。

当たり前のことをしないときに叱る

このように、選手に対する熱く、そして優しい思いを持つ荒井監督ですが、当然怒るときもあります。

当たり前のことができない、当たり前のことをしない。そんな姿が目に入ってきたら叱る。なぜなら、野球人である前に、人間だからだ。

ここでいう「当たり前のこと」とは挨拶をしない、寝坊する、好き嫌いをして食事を残す、など生活面のことが多いとのこと。

どれだけいい大学を出て、いい会社に入る人間だろうと、そんな当たり前のことができない人間は、社会から信用されるはずがない。

もちろん、グラウンドでも決まり事があり、それを守らない選手には容赦しないようです。

ここでの考え方も、やはり「凡事徹底」です。

誰にでもできることを、
誰にもできないくらい、
徹底してやり続ける。

当たり前のことを積み重ねることの重要さを丁寧に説明してくれる良書です。
荒井監督の、厳しくも温かい人柄に触れることができます。